実践例:赤ちゃんを叩きに行ってしまう

実践例:赤ちゃんを叩きに行ってしまう

ワークシート1:(基礎情報)

おわかりになる範囲でご記入ください。

年齢 11歳
性別
診断名 自閉症
所属 特別支援学級
知能検査 検査名 田中ビネー知能検査Ⅴ
検査結果 IQ55
特徴 文章で会話することができる。簡単な質問であれば、適切にこたえることができる。大人とのかかわりを求めて、自ら話しかけることもある。平仮名や片仮名を読むことができ、一ケタの足し算や引き算がわかる。日記などで自分の行ったことを文章で書くこともできる。自転車に乗って、ほしい漫画などを買い物に出かけることもできる。親から言われたお風呂掃除や玄関の掃除などの簡単なお手伝いもできる。6つ違いの自閉症の弟がいる。

 

ワークシート2:(MASDurand とCrriminsが1988年に発表した、行動問題の機能を探るための質問紙。16の質問項目からなり、7段階のリッカートスケールで評価を行う。評価の結果をもとに、物や活動の獲得要求、注目要求、逃避要求、感覚要求の4種類の機能のいずれが当該行動の機能である可能性が高いのか、推測することができる。主観的な評価ではあるが、信頼性や妥当性が確認されている。

お子さんの 自分の頭を叩く という行動についてのMASの採点結果

感覚要因 逃避要求 注目要求 物や活動の要求
1. 2. 3. 4.
5. 6. 7. 8.
9. 10. 11. 12.
13. 14. 15. 16.
合計= 14
平均点= 0.75 3.5
順位=

ワークシート3:(行動問題の特徴)

1. その行動はいつ起こることが多いですか? 外で赤ちゃんを見かけたとき
2. その行動はどこで起こることが多いですか?
3. その行動は誰に対して、あるいは誰と一緒のときにおこることが多いですか? 母親
4. その行動は何歳くらいから始まっていますか? 弟が生まれた後から
5. その行動はどのくらいの頻度で起こりますか?
(たとえば、1日に2,3回、1時間に1,2回、1週間に1,2回など)
赤ちゃんを見かけるたび
6. その行動はどのくらいの強さで起こりますか?
(たとえば、隣の部屋に聞こえるくらいの声、叩いたところが青くなるくらいの強さなど)
叩く前に制止するために、実際に叩いたことはほとんどないが、叩いてしまった場合は手加減をしている様子はなく、2,3m離れた人にも叩く音が聞こえる程度
7. その行動が起こっている様子を具体的にご記入ください(「他害」というのではなく、頭を自分のこぶしで叩くなど) 赤ちゃんを見かけると走って近づく。ちらちら母親の様子をうかがう様子がみられる。
8. その行動に対して、どのように対応しますか?
該当することに○をしてください
放っておく・要求しているものを渡す・好きなことをやらせる・〇その場から離す・〇注意する・クールダウンのための手続きをとる(具体的には  )・その他(手をとって止める )
9. その行動は上記の方法で収束しますか? 目の前から赤ちゃんがいなくなるまでもがいた後でやめる
10. その行動はどのくらいの時間続きますか? 赤ちゃんが見えなくなるまで
11. その行動と関連していると思われる項目があれば、○をして具体的に記入してください。 なし
12. お子さんが特に興味や関心の高いことは何ですか?また、こだわりはありますか? アルバムを見ること
自転車に乗ること
こだわりはない
13. お子さんが苦手なことや嫌いなことはどんなことですか? 赤ちゃんの泣き声
弟と一緒の部屋で過ごすこと
14. お子さんの主となるコミュニケーション手段は何ですか? 音声言語で文章を用いることができる
15. 左記の項目において、お子さんの好きなことがあれば、具体的にご記入ください。 遊び(ウノやテーブルゲームなど、簡単なルールのある遊び)
キャラクター(ディズニー              )
歌手(                          )
食べ物(                        )
趣味(漫画を読むこと、アルバムを見ること、決まったアニメを見ること)
その他(                        )
16. お子さんが人とのかかわりで喜ぶことはどんなことがありますか?先の項目において該当することがあれば具体的にご記入ください 拍手・頭なで・〇ハイタッチ・〇握手・くすぐりなど
遊び(会話                      )
賞賛(ことばで「さすがだね」「格好いい」など )
お手伝い(                       )
儀式的なやり取り(                 )
お出かけ(                      )
お小遣い (お手伝いをしてお小遣いをもらっている)
その他(                        )

ワークシート4:(ライフスタイルの特徴)

時間 どこで だれと 何をする
7:00 起床 朝の支度 学校へ行く準備
7:30 リビング 家族 朝食
8:00 一人 登校
8:15 学校に到着
15:30 帰宅 着替えなど
16:00 リビング 弟・母 おやつ・お手伝い(お風呂掃除)
16:30 リビング 母か一人 宿題
17:00 部屋・外 一人 自由
19:00 リビング 家族 夕食
19:30 一人 入浴
20:00 家族 テレビを見る
21:30 一人 就寝

生活地図

ワークシート7:(頭の中のアセスメント)

ワークシート7:(頭の中のアセスメント)

ワークシート8:(ABC分析)

行動問題の直前に起こっていることをきっかけの箱に、具体的な行動を行動の箱に、行動の直後に起こった結果あるいは周囲の対応について結果及び対応の箱に記入しましょう。ほかの人がみても書いた人と同じことを思い浮かべることができるように書くことが大切です。行動問題が起こる状況がたくさんある場合には、必要に応じて、箱を増やしてください。

きっかけ 行動 結果および対応
赤ちゃんがいる 赤ちゃんのそばに走って行って叩こうと手を振り上げる お母さんに止められる・注意される
赤ちゃんのお母さんに声をかけられる

支援計画

支援方針

  1. 赤ちゃんを叩くことによって、お母さんにそばに来てもらうのではなく、別のよい行動をすることによってお母さんと二人だけで過ごす時間を保証する
  2. 赤ちゃんの泣き声に対する嫌悪性を緩和する
1に対するアプローチ
きっかけ 行動 結果および対応
お手伝いをする お手伝いをした日はカレンダーにスタンプを押す。スタンプがたまったら、週末にお母さんと二人だけでお買い物やレンタルビデオ屋さんにビデオを借りに行く

お手伝いはこれまで当たり前にやっていたことだが、時々忘れてしまう。また、やっても誰からも感謝されることはなかった。1日2日忘れても、お母さんと過ごす時間が保証できるように、最初のうちはためるスタンプの数を3,4個とする。様子を見ながら、お手伝いの種類を増やしたり、貯めるスタンプの数を調整する。

赤ちゃんを叩いてしまうことに、効果がみられないようであれば、外で赤ちゃんを叩かなかったことについて、スタンプを押す、というバリエーションを導入する。

2に対するアプローチ
きっかけ 行動 結果および対応
赤ちゃんを見かけたら イヤーマフをする
音楽を聴く
「大丈夫」と言ってポケットの中のキャラクターを触って、後ろを向く
赤ちゃんの声が聞こえなくなる
赤ちゃんの姿が見えなくなる

ポイント

  1. 弟と一緒にいることが多いために、お母さんと二人で過ごすことがない。生活の中で意図的にお母さんと過ごす時間を設定する(環境豊饒化対象者の好きなものや活動をたくさん用意することによって、行動を減らす方法。)。
  2. スタンプは、たまることによって好きなことができるトークントークンとは般性強化子あるいは代理貨幣ともいわれる。トークンを集めることにより、価値のある強化子=バックアップ強化子と交換できるシステムをトークンエコノミーシステムという。として使う。スタンプが使いにくければ、マジックなどでチェックをしたり、シールを貼ったりすることもできる。