要求言語行動と注意喚起行動
要求言語行動とは、簡単にいうと自分が欲しい状況を手に入れるために他者に働きかけることです。要求言語行動が生起するためには、①聞き手がいること、②摂取制限(欲しいものが手に入らない)や嫌悪刺激のある状況下にあること、の2つの条件が必要です。つまり、手元にたくさんクッキーがあれば「蓋あけて」と頼む必要もないし、部屋に誰もいなければ「背中かいて」といわずに自分でまごの手を使ってかきます。
要求言語行動の指導を行うためには、子どもにとって「困ったなあ…」という状況を設定する必要があります。摂取制限や嫌悪刺激のことですね。例えば、「ちょうだい」という要求言語行動を教えたいときは、欲しいものが手に入らない状況が必要です。「手伝って」を教えたければ、一人で運べないような大きい机が必要です。
動画の説明
この動画では、注意喚起行動の指導を行っています。注意喚起行動とは、聞き手の注目がない状況で注目を得るために行う行動のことで、これも要求言語行動の一つです。
さて、注意喚起行動を指導するためには当然「聞き手が注目していない状況」を設定しますが、「聞き手が注目していない状況」が子どもにとって困った状況でないと意味がありません。極端な話、「先生がなんだかそっぽむいてるけど、別にいいや」となれば注意喚起行動は生起しません。
この指導では「欲しいおもちゃが手に入らない」うえに「要求したいけど先生がこっちを見てない」という状況を作りました。そうすることによって、子どもは「先生をこっちに振り向かせたい!」と思うようになります。
この動画のお子さんは、PECS自閉症やその他のコミュニケーション紹介のある人々に対して、アンディ・ボンディとロリ・フロストにより開発されたAACの一つ。絵カード交換コミュニケーションシステム。応用行動分析学の理論を用いて、6つのフェイズからなるトレーニングで構成されている。という絵カードを用いたコミュニケーションツールを使って、欲しいものを要求することができます。しかし、聞き手の注目がない状況でもただ絵カードを差し出すだけ・・・・これでは聞き手は気づいてくれませんね。そこでこの指導では、絵カードを差し出すときに、声を出して相手の注意を喚起することを教えました。
動画の前半では、黙って絵カードを差し出しても聞き手が気づいてくれず困っていますが、プロンプターの「あ」というプロンプト弁別刺激だけでは行動が生起しない場合に、行動の生起を促すために補助的に用いられる刺激。言語プロンプト、視覚プロンプト、身体プロンプトなどがある。言語プロンプトは、音声言語を用いたもので、もっともよく使用される。視覚プロンプトには、文字やイラスト、シンボルといったものから、サインやジェスチュアーといったものまである。いずれも参照することによって、何をすればよいのかわかりやすく示される。身体プロンプトは、身体ガイダンスや介助といった言い方をされることもある。手を添えて行動を促す。を手がかりに声を出すことができました。後半は、プロンプトがなくても自分から声を出して聞き手の注意を喚起することができるようになりました。
たくろう